終の棲家
終の棲家とは、一線を退いてから生涯を終えるまで静かにそして心豊かに過ごす住居のことで、終活を考える上で重要な位置を占めます。私は漠然とですが、山が見えて景色の良い田舎に古民家的な別荘を持ち、そこをベースとして現在の住居との二重生活をしながら、自分やカミサンの健康状態や子供たちの状況に応じてその比重を変えていく、ということを考えていました。そして暇があれば信州の古民家情報を眺めたりしていました。ところが先日、心臓の問題が発覚し2年以内に云々などと言われると、「終の棲家」どころではなくなり、「終焉の棲家」について目途だけでも立てておかねば、と思うようになりました。
私は兵庫の田舎育ちですが、大学から東京に出て就職後は海外と東京との往復、そして持ち家は千葉です。子供たちも東京に住んでいるので、今更兵庫の実家近くにお墓を準備する気はありません。さりとて今住んでいる「ちばらぎ」近辺で探すかと問われると、それもピンときません。「ちばらぎ」は首都圏ではまだ開発が遅れている地域で空いている土地はたくさんあります。なので自宅の周辺でも新しくxx霊園なるものがいくつも開発(分譲??、建築??、建売??)されています。お盆やお彼岸になれば新聞の折り込みチラシも入ります。車で近くを通った時に覗いたりチラシの案内を見ると、すごい勢いで分譲(??)されているようで、数か月前までは空き地(分譲予定地??)だったところが、今は立派に建売(??)が並んでいます。私より一回り上の団塊の世代にとっては差し迫った問題で、これらの方々がきっと購入されているのでしょう。場所によっては第3期分譲などと書かれたのぼり旗が立っていて、バブル期の住宅販売を彷彿させる光景です。
では自分がこの分譲建売りに住むのか?と問われると、やっぱり答えはNoです。右も左も同じ大きさの碑が並んだ狭い一画に閉じ込められたくないとい思いが強いです。となると、どのような「終焉の棲家」が好いのか? 直ぐに浮かぶのは樹木葬です。土に戻る・自然に還るという発想、そして木々に囲まれた環境など都会の分譲地と比べてとても魅力的です。そこで樹木葬について調べてみました。そしてわかったことは樹木葬はピンキリだということ。というか種類が多すぎて一概に「樹木葬=自然に還る」わけではないことです。
一般的には公園型、庭園型、里山型があります。公園型はシンボルツリーの周りに小さな区画が割り振られるタイプ。庭園型は公園型よりも小規模でシンボルツリーと言うよりはガーデンと言う感じ。里山型は、1~2m四方の広い区画に好きな樹木(と言っても種類は指定されるようですが)を植えるタイプ。また価格や将来的な管理方法に応じて個別区画、集合型、そして合祀型もあります。「自然に還る」イメージが最も強いのはもちろん里山型ですが、逆に都会の庭園型では限られた土地利用の観点から土中に直接埋骨するのではなく、壺や特別の容器に入れての埋骨、そして一定期間の後に掘り起こして合祀するケースなどもあるようです。場所や管理する団体に依っては通常のお墓と変わりがなく、何のことはない単に碑が小さくなっただけではないかと思えるところもあります。
私はやはり「自然に還る」ことが第一と思っています。首都圏で里山型の樹木葬をググると千葉県の数カ所が上位に検索されます。ホームページでこれらを調べると、なるほど区画も広く自然一杯です。HPにはショートムービーの紹介もあり様子がわかります。なかなか良さそうです。見学ツアーもあるようで一度視察したくなります。ただ何度かムービーを見返すと、手入れがされている区画もあれば荒れ放題の区画も見えてきました。全ての区画が手入れされずに放っておかれれば「自然に還る」イメージですが、手入れされている区画とそうでない区画が混在すると、どうしても比較することになり、荒れ放題の区画はお彼岸でも花の添えられていない普通のお墓のように寂しく思えてきました。そして自然に還るという良いイメージよりも単なるお墓に過ぎない(当たり前のことなのですが)というイメージがどんどん強くなりました。一度そのように思い出すと私の中の里山型のイメージがどんどん崩れます。手入れが必要、そして樹木の手入れは手がかかる。自分の区画だけ樹木が枯れたら…等々を考えると樹木葬はベストの選択ではない。その上費用もそれなりにかかるようである。つまり里山型は田舎の不便な分譲地を高値で買うようなものである、と思えてきて結局私の中の選択肢から消えてしまいました。
そこで私の希望は一体何? と再度問いました。「自然に還る」ことは重要。また新興の分譲住宅のようでないこと。後々手がかからないこと。別に首都圏に拘らない。こう考えてゆくと、全国区でそれなりに古いお寺で樹木葬と言う選択肢があるのでは? そういうところなら新興分譲ではなく、管理も問題ない。そう考えて調べてみるといくつか候補が見つかりました。全国区といっても見ず知らずの土地と言う訳にもいかないのでとりあえず京都とか奈良とかに限りました。一つは高野山。有名な奥の院の一区画を更に小さく区分けして埋骨し、苔で覆うというタイプ。京都でも同様に苔で覆うタイプがいくつか見つかりました。また吉野で桜の木に囲まれた場所もありました。いずれも有名なお寺が管理する所で、個人が手入れする必要もなさそうです(というか、できないようです)。一区画が20cm四方程度と狭いですが、そもそも一庶民が高野山奥の院の一等地に広いお墓を構えることなどできる訳がありません。そして何といっても一見した限りでは「分譲住宅」ではなく、自然感がたっぷりです。京都や奈良に限ることなく探せばもっと良いところが見つかるでしょうが、今のところこのタイプが一番ピッタリのように思えました。
2回目のカテーテル手術も無事に終わった今の体調を考えると、「終焉の棲家」探しはまだ差し迫ったものではなさそうです。また探し始めたらキリがないのでこの辺りで一旦小休止することにしました。でも今回色々と調べたことで、漠然としていた考えも整理でき方向性が見えました。ちょうど良い機会だったように思えます。
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