訪日観光客の受け入れ開始
先日来、訪日観光客の受け入れを6月10日から開始する、そして一日の入国者を1万人から2万人に引き上げるというニュースが流れています。私のようにインバウンドに携わる者にとっては嬉しいニュースですが、気がかりなことがあります。それは観光客と言ってもパッケージツアーに限るという条件が付いていることです。入国が認められるのは、添乗員が客の行動を管理できる団体ツアーのみで個人旅行者はこれまで通り入国できないとの事です。
今どき、パッケージ旅行と言うものには少し違和感があります。年配の方や初めて海外旅行をする方はさて置き、欧米人で旅行と言えばずっと以前から基本は個人旅行です。コロナ禍前のラグビーワールドカップが開催された2019年に街に溢れていた観光客は、主として個人旅行者だったと思っています。
確かに箱根や日光など東京から少し離れた観光地は交通の便を考えるとパッケージ旅行の方が便利であり、実際に団体バスをよく見かけました。しかしこれらは東京発の日帰りツアー等で、今回政府が入国を認めた入国から出国までスケジュールが完全に管理されているツアーとは異なります。
また私たち日本人が利用する海外旅行ツアーにしても、有名な観光地はツアー客全員で巡りますが、現地オプショナルツアーの用意があり、大都市滞在時の自由時間が設定され、また旅行中何度かは自分でレストランを探して食事をするように組まれているのが一般的です。この自由な時間こそがいわゆる“爆買い”の時間であり、また土産物屋の賑わいにつながるのです。旅程を完全に管理されるということは、このような自由時間もほとんど設定されないわけで旅行の楽しみが半減するように思えます。コロナ禍が収束しつつあり、やっとのことで観光開国した日本に最初にやって来たいと思う外国人は、初めて日本を訪れる人ではなく、日本を愛するリピーターであり個人旅行者です。彼らのことをもっと考えてはどうでしょか。
今回認めたパッケージ旅行で潤うのは大手旅行会社と一部のホテルと土産物屋だけのように思え、やっぱり片手落ちの政策のような気がします。個人旅行者の入国緩和も含めた抜本的な観光政策が必要ではないでしょうか。
さて訪日観光客に関してもう一つ話題となっているのが、観光客がマスクをつけないかも知れないという懸念です。私はマスク着用に対して拒否感が強い欧米人観光客にマスク着用を促しても無理なような気がします。アジアからの観光客は比較的従順に思えますが…
屋外を観光している時は尚更で、彼らから逆に「屋外は常に換気されている状態であり、他の人との距離も離れているのでマスクをする意味がない」と正論を吐かれてしまいそうな気がします。
先週末に東京に出る機会があり、ついでに浅草を覗いてみましたが、外国人観光客も相当数見かけました。一般観光の入国が認められていないので、日本在住者か出張者か留学生だと思います。私が見たところ、彼らの約半数は屋外ではマスクを着用していませんでした。これが彼らの”日常”なのでしょう。
しかし浅草の混雑ぶりには驚きました。天気も良かったせいか、仲見世通りはコロナ禍以前と変わらないように思えました。ほとんどの人はマスク着用でしたが、人気のお店の前では立ち食いしている人も沢山いました。東京都の感染者数も減っており、重症化リスクも低いので、大多数の人にとってコロナは過去になりつつあるのかも知れません。
雷門近くで面白いと感じたことがありました。それは観光人力車に乗っている観光客が多いことと、観光用の着物を着て歩いている若い女性が多かったことです。両方ともコロナ禍以前も人気があったのですが、利用客はほとんどが外国人観光客だったように思います。特に着物を見ている女性はまず間違いなくアジアからの観光客でした。でも今は日本人観光客が利用しています。この現状を見ると、“着物を着て観光したい”という願望は日本人も持っているが、外国人観光客のように見られるのを嫌って今までは我慢をしていたのかな、と思ってしまいました。
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