シャンクの嵐

私がよく観るゴルフ番組の一つに、日曜日の午前にTV東京で放映されている「ゴルフ侍」があります。アマチュアゴルファーが一線を退いたシニアプロゴルファーとアマチュアのホームコースで9ホールのマッチプレ対戦をするという企画で、ゴルファーの間では結構人気のある番組です。

この番組を面白いと思う一つの理由は、番組の冒頭でその回に対戦するアマチュアゴルファーの人生が語られる点です。アマチュアゴルファーと言ってもレベルが高く、何度もクラブチャンピオンを獲得しているような強者、まさしく「侍」ですが、その方がどのようにゴルフと関わって来たか、どのようなゴルフ観を持っているのかを見聞きすることは、やはり四半世紀以上の間ゴルフと付き合っている自分と比較するなど、とても楽しめます。またインタビューへの受け答えや練習風景から、そのアマチュアが番組内でどのようなゴルフを展開するかを想像し、実際の対戦と比較して楽しむこともできます。例えばインタビューで謙虚さが感じられないアマチュアは、案の定強引なプレー運びでやっぱり自滅したとか、スイングフォームが悪くそれ程上手と思えないアマチュアでもしたたかにプロに食い下がったとか…。

またこの番組を見ていると、ゴルフというスポーツが本当にその人の考え方やその時の心の動きを如実に映し出すスポーツであることが良くわかります。時折プロが失敗しアマチュアに勝つチャンスが回って来た時など、画面を通してアマチュアが「勝った」と思った瞬間が伝わってくることもありますが、そのような場合は往々にして次のショットで大ミスをし、チャンスを活かすことができないというケースは良く見られます。このように心の動揺がプレーに如実に表れるようなことは、精神レベルが高いトーナメントプロの中継ではめったに見られないことで、アマチュアが参加する番組ならではです。自分自身にも当てはまることが多く、とても参考になっています。

さて、今週もこの「ゴルフ侍」を観ましたが、今回は本当にびっくりしました。というのは、対戦プロのレベルが(少なくとも対戦当日の状況では)明らかにアマチュア以下だったからです。ドライバーショットは飛ばないうえによく曲がる。ミスショットしてラフに入るといったレベルではなく、半分ぐらいのショットが林の中か、左右の土手の険しい傾斜地。スイングフォームの悪さは言うに及ばず。そしてグリーン上でもひどいパット。まずパターをスクエアに振れない。人それぞれの癖があると言ってもあまりにもひどすぎる。そしてこれらに輪をかけてひどいのはアイアン。ミドルアイアンはシャンクかトップ。最後のホールでは70ヤード程度のアプローチもシャンク。まさにシャンクの嵐でした。
そして更に驚いたのは、不調とシャンクの原因を尋ねられて「わかりません」と答えたこと。素人の私が見ても、肩も腰も回らず手打ち、打つ前に伸び上がっている、スイングが早すぎる等々の原因は画面を通してわかります。これらの問題は基本中の基本だと思うのですが、それがわからず修正もできないとは、いくら一線を退いたとは言えプロとして失格と感じました。

放送回ごとに出演プロが異なるので、現役でも戦えそうなプロが出演する場合もあれば、かなり高齢でプレーそのものが大変そうな場合もあります。スイングフォームも飛距離もまちまち、そして年齢から技術が今一つというプロもいますが、一様に言えることは技術にとどまることなく、ホールの攻め方や狙い目などの戦略で、やはりプロだなと思わせる一面があることで、必ず参考になります。では今週はどうだったか? 残念ながら技術的にも戦略的にも参考にすべき点はほとんどなかったと思います。ただし画面を通してプロが実際にプレーしてシャンクを連発してあたふたする姿を見ることができました。

シャンクの原因や治し方についてはネット上で記事や動画が溢れていますが、実際のプレー中のシャンクの映像はそれ程見る機会がありません。私もプレー中にシャンクが止まらなくなって、気が動転して落ち着いてショットすることができなくなり悪循環に陥るという苦しい思いをした経験は何度もあります。しかし後になって原因を特定しようと考えても、「体が伸び上がっていた」とか「肩が回っていいなかった」というのは想像にすぎず実際の姿はわかりません。
何十年もその道で飯を食っているプロでも同様なトラブルに陥ることがあること、そしてその時の悪い打ち方の映像を放送したのは、シャンクで悩んでいるアマチュアゴルファーに勇気を与えるとともに、「あなたのスイングはこうなっていますよ。真似しないでね」というのが番組からのメッセージだったかも知れませんね。 反面教師と捉えましょう。

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Posted by Sorato